カイトの1

概要

初音ミク(モデル:Lat式ミク)は昔から音楽をしている少女。高校生になり、この学校に軽音部があると聞いて入部を決める。個性的な先輩たちに振り回されながらも、楽しい学生生活。
音楽の腕を上げ、学祭に臨む。
そしてステージ直前のコンセントレーション。一人の神聖な時間。
楽屋に息せき切って若い男が入ってきた。青い髪に青いマフラー、こんな季節にコートのような服。若者は息を整えると顔を上げ、手を差し出した。
「やっと見つけた……さあ、帰ろう、ミク姫」
その瞬間、初音ミクは自分が何者なのかを思い出した。そしてここが自分の本当の居場所でもないことを。
カイトの肩に載ったピンクのタコも促す。
「はやく、ミクちゃん。帰れなくなっちゃうよ。この世界は『居心地が良すぎる』んだから」
それでもミクは弱々しく反論する。
「……でも、私がいなくなったら」
知ってか知らずか、たこルカは明るく否定する。
「大丈夫よ。ミクちゃんがいなくなったら、ミクちゃんが押しのけていた誰かが戻ってくるだけだから。その子がミクちゃんのかわりをするわ。記憶も、記録も、全て最初からそうであるように修正される。それが世界の可塑性だって、ルカちゃんが言ってた!」
ミクは立ち上がる。突然の別れに、頬を涙が伝う。ずっと差し出されていたカイトの手に触れた時、ミクの姿は消え、カイトの手の中に欠片が残された。
「さ、帰ろう」
「うん!」
カイトはたこルカに合図する。たこルカがぐわっと巨大化しカイトをパクっと飲み込み、さらに自分自身もぎゅるぎゅると飲み込んで、手品のように跡形もなく消え去った。
しばらく後。
「あずにゃーん! 始まるよー!」
楽屋の外からの呼びかけに、中野梓は目を覚まし顔を上げた。
「はーい! すぐ行きまーす!」
集中するはずが、つい眠ってしまっていたようだ。
そう、私は中野梓、軽音部の一員。この世界が始まった時からそうだった。

使用楽曲

GO! GO! MANIAC

音源

D