白球とメイドさん

第二話

「こちらです」 栃村が案内した練習場兼宿舎は、ひどく山奥にあった。 民家一つない山奥なのは確かだが、道だけは六車線の立派な道路であり、近くに高速のインターもあるようだった。 道路の先には、広い敷地があったが、倉庫や工場と言った感じだ。 「我が…

第一話

1 あの時のマウンドは、今でも夢に見てうなされる。 九回裏二死満塁。絵に描いたようなギリギリの状況で、俺はマウンドに立っていた。投げれば、どうあっても決着がつく。勝つにしろ負けるにしろだ。 俺は投げた。けれど、俺の肘が壊れたのはこのタイミング…