五日目

 私が帰った時、家の中は何もできていなかった。手に持ったスーパーの袋の重さが、私を悲しい気分にさせた。嫌な予測ほど当たるものだ。食材を買ってきておいてよかった。
 両手がふさがっていたので、肩でリビングの照明をつけると、ソファーに寝そべった妻の姿が闇の中から浮かび上がり、寝返りを打った。
 今日のはなんだろう。私は近寄って目を凝らす。
「……あ、この人の封神演義は結構面白かったんだよなあ」
「んー?」
「で、どう?」
「んー。章の最初の説明は面白いけど、本文はイマイチ」
 妻からまともな返答がもらえるとは期待していなかっただけに、内容ともども驚いてしまった。
「そっかー、イマイチなのか……」
 私は封神演義のストーリーを思い出しながら、台所に立ちスーパーの袋から食材を取り出し、料理にかかった。