六日目

 今日は休日だったので、私は朝からリビングにいた。妻は昨日のうちに昨日の本を読み上げてしまって手持ち無沙汰だったらしく、朝食を作ってくれた。くれた? いや待て。そう言えば朝食だけは毎日妻が作っていた。その他の家事は全くできていなかったが、朝だけはきちんと起きていた訳だ。規則正しいと言えば規則正しいが……。
 妻が入れてくれた食後のコーヒーを飲んでゆっくりしていると、チャイムが鳴り、返事を待たずに玄関ドアが開いた。勝手知ったるなんとやらと言う雰囲気を漂わせて、ドカドカとリビングに入ってきたのは、妻の友人の矢追さんだった。確か妻と同い年で、腐女子仲間だ。
「おっはようございまーっす!」
「おはようございます」
 矢追さんは私と少し世間話をすると、目を輝かせて「よし」の一言を待つ犬のような妻に向けて、「ほい」と手に持っていた紙袋を手渡した。
 妻は喜色満面でその袋を受け取り、中身を床にぶちまけた。三好徹の文庫本が山をなした。
「それじゃーねー!」
 矢追さんは手を振って去っていった。私はそれを玄関まで見送ったが、リビングに戻ると妻はすでに黙々と読み始めていた。今日も読書三昧するつもりらしい。