七日目

 どうやら妻は速読家らしい。いや、薄々思っていたことではあるが。
 家事は全くしなくなるものの、一日で五冊の文庫本を読破すると言うのは並大抵の速度ではないだろう。しかも、私が気付いていないだけでちゃんと間に目の休息を挟んでいたのだ。これは驚きだった。
 もっとも、読み終わった直後の妻の放心した表情や、それからしばらくしてやってくる落ち着かなげな様子などは、麻薬中毒か何かと見まがうばかりの異常さを感じられた。明日は休日その二なのだから、神様と同じように休ませようと思う。
 翌朝、私は妻を誘って近所の公園に出た。外に手ぶらでいれば本を読むこともあるまいと思ったからだ。狙いはあたり、妻は芝生の上で陽光と風に触れ、気持ちよさそうに目を細めた。そのまま眠り込んでしまったのは意外だったが。連れて帰るのに苦労した。
……結局、料理は私がした。妻がそのまま目を覚まさなかったからだ。

本日の本

なし