八日目

 私が家に帰った時、やはり家事は何もできていなかった。元の木阿弥と言う奴だ。あれだけ読めば少しは満足すると思うのだが……。
 頭突きでリビングの照明を入れ、妻が寝そべって何を読んでいるかを確認する。読みながら妻がにやにやむふむふ笑っている。聞いたことのないタイトルに聞いたことのない作者。
「……誰の本?」
「んー。やおい三国志
 妻の端的な説明に、少々引く。妻と結婚した時、腐女子趣味については了解済みだった。それはもちろん、妻も私のオタク趣味について了解済みだったことも意味する。お互いの趣味については口を出さないことが、暗黙の了解としてすでにある。しかし、三国志やおいとは。
「世の中、色んな人がいるなあ……」
 私は逃げるように台所に飛び込んで料理を始めた。